PCがまだ人間の時点からシナリオを始めるため、STはプレイヤーにキャラクターシートの一部(クラン、妖力など)を空欄のまま残すよう指示していた。ここからはヴァンパイアに転化するので、残りの部分を埋めるよう指示する。
ST |
ただ、君たちがヴァンパイアであるというのはプレイヤー知識。キャラクターはまだ知らないからね。そこんとこは押さえといて。
さて――目が覚めると、真っ暗だ。 |
ブラック |
見知らぬ土地ですか? |
ST |
土地というより、そもそも此処はどこ、って感じ。どれくらい眠っていたんだろう? とても空腹だ。 |
ジェイムズ |
喉、渇いてるんじゃないですか(笑) |
ST |
(うなずく)辺りは猛烈に寒い。季節は夏の初めのはずなのに。 |
ジェイムズ |
真っ暗なのになぜか眼は見えている? |
ST |
ぼんやりとはね。良くは判らない。誰か煙草吸う人いれば、マッチかライター持ってるでしょ。 |
ジェイムズ |
身体に悪いの判ってるけどなー(←実は医者)。吸ってるんだろうなー。探偵の小道具として煙草は吸わないと(笑) |
ブラック |
探偵はね(笑)煙草は匂いが付くから嫌いだな。我々は縛られてるんですか? |
ST |
手足は自由なようだ。 |
カール |
とりあえず、外に出ましょうや。 |
ST |
暗くて出口が判らない。 |
ジェイムズ |
ライターを点けてみる。 |
ST |
そう。この中で妖力〈千里眼〉持ってる人は?(ジェイムズとブラックが手を挙げる)じゃあ、ライターの炎が強烈にまぶしくて目がくらんでしまう。両眼に短剣をぐさっと突き刺されたような痛みを感じる。 |
ブラック |
それ、めちゃめちゃ痛いやん! |
ST |
痛いねえ。 |
ブラック |
け、消してくれ〜(←〈千里眼〉レベルが最も高い) |
ジェイムズ |
慌てて消す。 |
ブラック |
ああ、痛かった(涙目)なんだ今の光は。 |
カール |
もっぺん点けてみろ。 |
ブラック |
やめてくれ! |
ST |
どうやらやっと明かりに眼が慣れてきたようだ。辺りを見ると……(ジェイムズとブラックを交互に指さし)腐れ縁。(カールとジェイムズ、カールとブラックを指さし)最近君たちの担当になった製薬会社の新人の営業。 |
カール |
おお、見知った顔が。 |
ブラック |
貴様らか。 |
ジェイムズ |
なんでおまえがこんなところにいるんだ。俺をどうするつもりだ! |
ブラック |
それはこっちの台詞だ! |
ST |
言い合っていると、別の隅で話し声がする。『メイヴィス、メイヴィス? ここどこ?』 |
ジェイムズ |
スージーか!(メイヴィスは片思いの相手。スージーは彼女が引き取って面倒を見ている親戚の子供) |
ST |
(黙ってうなずく)『スージー? スージー、そこにいるの?』 |
ジェイムズ |
メイヴィスも? 明かりをそっちに向ける。 |
カール |
なんだ、知り合いかい。 |
ジェイムズ |
うん。 |
ST/メイヴィス |
『ジェイムズさん?』ところでブラック。メイヴィスはあなたを知っていますか?(俺表で「ジェイムズの大切な人を狙っている」を振った) |
ブラック |
顔も名前も知ってるはずだよ。 |
ST/メイヴィス |
『まあ、ブラックさんもいらしたの。そちらの方(カール)はお知り合い?』 |
ブラック |
ええ。こんなところで、一体どうしたんですか。 |
ST/メイヴィス |
『それは私の方が聞きたいんですけど』 |
ブラック |
私たちにも全然…… |
ST/メイヴィス |
『帰り道にお爺さんに道を聞かれたところまで覚えてるんですが、くらっと眩暈がして気が付いたら……』 |
カール |
はっはっは(同じシチュエーションで誘拐されている) |
ブラック |
いやあ、ここは蒸し暑いね。メイヴィス、喉が渇かないか?(すごく白々しい口調) |
カール |
俺はすごく寒いんだが…… |
ブラック |
とりあえず、彼女に怪我がないかどうか診てやろう(←実は闇医者)。近づいていく。 |
ジェイムズ |
(ブラックの本意を察して)メイヴィスさん、怪我はないですか? と紳士的に声をかけて近づいていこう。 |
ST |
じゃあ5人寄り集まるわけやね。するとメイヴィスとスージの体からとてもいい匂いがする(邪悪な笑い) |
ブラック |
いい匂い、ね(笑) |
ST |
喩えて言うなら、ステーキ屋の前を通ると匂ってくるような。 |
ジェイムズ&カール |
「おおっ(悲鳴に近い笑い) |
ST |
あるいは腹が減ったときに目の前に出されたビーフシチューのような。 |
ブラック |
なんだ、この限りなく食欲を増進する香りは。人間を切り刻みたいという衝動とは別の衝動が…… |
カール |
(苦笑)やな奴だねえ、まったく。 |
ジェイムズ |
うう、プレイヤーとしては(吸血鬼化のせいで感覚が変化していることが)判っちゃってるんですが。 |
ブラック |
こんなところでぐだぐだ喋っていても仕方ない。 |
ジェイムズ |
出口を探しましょう。 |
カール |
建設的意見だな。 |
ST |
部屋の隅に上り階段があって、天井に跳ね上げ戸がついている。 |
ジェイムズ |
その扉を開ける。 |
ST |
じゃあ扉に手をかけるね? 物凄く熱いよ。 |
全員 |
熱い? |
ST |
ジェイムズ、強靱力判定をしてください。難易度4。 |
ジェイムズ |
3個成功。 |
ST |
あと一瞬手を離すのが遅れていたら、掌に大火傷をしていたところだ。 |
ジェイムズ |
あちっ! なんだなんだ!? |
カール |
このクソ寒いのに? |
ブラック |
ちょっと扉に手をかざしてみるけど。熱気を感じますか? |
ST |
ええ、ひしひしと。 |
カール |
その辺に棒とかないかな? |
ST |
棒ねえ……棒はないな。ベッドに寝かされてたんで、枕と毛布ぐらいなら。 |
カール |
枕越しにさわってみる。 |
ST |
枕、焦げますけど。黒く変色して。 |
ブラック |
物理的に熱いわけだ(体感的には寒いので、凍傷を疑っていたらしい) |
ジェイムズ |
助けを求めるために携帯電話を取り出しますが……圏外ですか(笑) |
ST |
圏外ですねえ(言わなきゃ外部に通じたかもねぇ) |
ブラックとジェイムズのプレイヤーは、メイヴィスとスージーが人間だと推測している。ヴァンパイアなら生理学的に死んでいるので、心臓の音が聞こえるはずもないからだ。だから「二人分?」なのである。