そして、私はしばし
リリスの家に住まっていたが
あるとき彼女にこう尋ねた。
「あなたは闇から、
どのようにしてこの家を建てたのか?
どのようにして衣服を作ったのか?
どのようにして食物を育てたのか?」

するとリリスは微笑んで言った。
「あなたと違って、妾は〈覚醒〉した身。
妾にはあなたの周りのいたるところに紡がれる力の糸が見えます。
妾は自分が必要なものを〈力〉で造ったのです」

「では私を〈覚醒〉させてくれ、リリス」私は言った。
「その〈力〉こそ私が求めていたものだ。
それさえあれば、自分で自分の衣服を作り、
自分の食べ物を作り、
自分の家を作ることができる」

懸念がリリスの眉を曇らせた。
「〈覚醒〉があなたに何をもたらすかは
妾にも判りません。
ましてあなたは父からまことに呪われた身。
あなたは死ぬかもしれない。
別のものに変わってしまうかもしれない」

カインは言った、「それでも、〈力〉をもたぬ人生は生きるに値しない。
あなたの贈り物がなければ私は死んでしまうだろう。
私はあなたの奴隷として生きるつもりはない」

リリスは私を愛している、私はそれを知っていた。
リリスは私の頼みを聞いてくれるだろう、
たとえ彼女の意に染まないことであっても。

そうしてリリスは、輝く瞳のリリスは、
私を〈覚醒〉させた。
彼女はナイフを取って自らを傷つけ
その血を器に注いでよこした。
私は飲み干した。血は甘かった。

すると私は奈落に落ちていった。
どこまでもどこまでも、
闇の底まで落ちていった。