レビュー: Valkenburg Foundation | ||
現在、Werewolf: the Apocalypseの市販キャンペーン・シナリオ集、Valkenburg Foundation (WW3101)を用いて実際にセッションを行っています。話もかなり進んだので、いったんSTとしての感想をまとめてみました。
[注意]サークル『きりんくらぶ』のメンバーは、この先を読まないでください。→戻る
5話完結のミニ・クロニクルと銘打っていますが、内容はかなり濃いです。1話1セッションで終えるのは難しいでしょう。私は1話2セッションのペースでこなしています(1回のプレイ4時間程度)。
クロニクルのキーとなる人物が第1話と5話にしか登場しないので、ともすればプレイヤーが当初の目的を忘れがちです。前回のストーリーの要約やクロニクル共通の主要人物表を作ると喜ばれます。
Willpower 消費による自動成功ルールは使用しない方が賢明かも。PCが厳しい状況に陥っても安易に脱出できてしまいます。戦闘バランスは案外シビアです。特に最終話は模擬戦闘でもして事前に調整しておくべきです。敵が敵ですからね。
また、事件解決に必要な情報を得られる場所が原書のままでは1箇所ずつぐらいしかないので、プレイヤーが Werewolf に不馴れだったり、見落としをしたりするとすぐ行き詰まります。アメリカの司法制度に関する知識がないと思い付かないような情報源があったりしますので、情報に関しては判定に成功すればヒントを与えるなど「ちょっと安易に与え過ぎかな」ぐらいでちょうどいいかもしれません。
PCに警察やマスコミ関係のコネは必須です。今回のプレイヤーの場合、コネをすべてNY分署の刑事やタブロイドの編集記者などローカル色の強い設定にしていたため、Valkenburg Foundation に着いてから情報収集の手段に Ally や Contact が使いづらく、特に第3話以降は苦労しています。
パックの構成については、Glass Walker など知識技能に優れたPCがいればストーリーが進めやすくなります。特に Computer, Law, Medicine のレーティングが高いキャラは活躍の機会があります。Wendigo もストーリーの背景設定に関わる部分が多いので、1人くらいいて損はありません。キャラクター作成時に迷うプレイヤーがいたら、STがさりげに勧めてみるのもよいのでは。
プロローグ的な役割を持つストーリーです。初回のセッションでキャラクター作成の後に行なうぐらいがちょうどいい。さらっと流せば半セッションで終わります。
Moot の場面でプロローグに出てくる Valkenburg 博士の日記を回覧するか、声に出して朗読する(!) よう指示があります。全文読み上げるとかなりの長文ですが、一応クロニクル全体の伏線になっているので省略するのも勧められません。私はさわりだけ読み上げ、あとは訳文を各プレイヤーに配付してセッション後にゆっくり読んでもらうという方法を取りました。
Orson Gravely はこのクロニクルのキーパーソンなので、印象に残るような演技を心がけましたが、多重人格のロールプレイは、疲れる......
補足:本文27頁の『Refusal』の文章が途中から欠落しています。プレイヤーがミッションを拒否した場合の代案ですので、実際のプレイで困ることはあまりないと思います。気になる人はWhite Wolf公式HPでエラッタがダウンロードできます。たいていのSTならとっさに思いつくような内容ですが。
Werewolf Croniclesに収録された分は直っているかもしれません(未確認)。
PC達が「Quest Pack」となってからの初仕事。読めばすぐ解りますが、PCがのんびり構えているとえらいことになります。特に推奨どおりNYの Sept of Green 出身の設定にしていてミッションに失敗した場合は Renown Rating 剥奪ものでしょう。
私の場合、プレイヤーが Werewolf に不馴れなため、露骨な誘導になるのを承知で『今の状況で普通のガルゥはどう考えるか』をアドバイスしていきましたが、もっとスマートな方法があるかもしれない。
それにしても高級レストランで真っ昼間から銃撃戦とは。プレイヤーも対処に困っていたようだが実はSTも途方に暮れていた。
NYが舞台で具体的な地名も出てくるので、旅行ガイドブックなんかを見ながらプレイすると盛り上がります。
このシナリオだけミッションの達成具合による獲得 Renown が明示されていますが、初版システムの数値なのであまり参考になりません。
あのサミュエル“皮剥ぎ”ハイトが初めて登場するシナリオです。序盤でいきなり残酷シーンを見せて Frenzy を強要するなど、第2話に増して過激な内容になっています。緊迫感を保つため早いテンポで進行させるよう本文で指示していますが、中盤の情報収集ではプレイヤーにしっかり考えてもらわないとサミュエル・ハイトの意図が見えてこず、事態の深刻さを理解しないまま対決に突入、ということになりかねません。終盤のハイト邸は今どき珍しいダンジョン風(懐かしい響き)。クリノス形態の鬼のような攻撃力にものを言わせる力押しプレイに慣れたプレイヤーにはいい薬です。
ただしSTが Willpower 消費による自動成功を認めている場合、凝った罠もあっさり回避されてしまいスリル激減ですが。
セッションではプレイヤーはハイトの陰謀を見破ることには成功したものの、その動機に関する情報が乏しかったためか感情移入してもらえず、『なんやこのおっさん、一人で自己完結して』というような当惑がみられました。特にシナリオで指定はありませんが、サミュエル・ハイトの背景情報も多少出せばよかったと反省しています。なにせ、彼とはこの先長い付き合いになるんですから……(ニヤリ)。
どうしろっちゅうんじゃこのシナリオは。
敵は国家施設、しかも核兵器研究所です。原書の記述も『力押しで突っ込んでっても無駄に散るだけ』と言わんばかり。下手をすれば政府を敵に回すというので、プレイヤーも必死に頭を絞っていました。医者を装って(Medicine技能もないのに…)潜り込むとか、AllyやContactを利用して通行証を偽造するとか、苦し紛れにかなりムチャなことを言ってきましたが、これは現実的に厳しく対応しました。Umbra経由という手段もあるのですが、序盤で地元のRed Taronから近くのUmbraにWyldingがあり危険だから近付かない方がいいと忠告される場面があったため、この可能性を頭から排除してかかっているようです。
全体的に、情報が錯綜しかなりの長丁場が予想されます。ST側が「出している情報」「まだ出していない情報」「使命達成に必要な情報」を把握しておかないと混乱するでしょう。まだプレイ途中ですが、3セッションぐらいかかるかも。
まだ目を通しただけですが、盛り沢山の内容のわりにシナリオとしての完成度はもう一歩という印象。プレイヤーがよほどWerewolfに慣れたベテランでないかぎり、書かれた通りにプレイすると「何だか訳が分からないが、とにかく強い敵がいっぱい出てきて勝手に去っていった」という感じになるでしょう。作成したばかりのPCでこのクロニクルを始めた場合、戦闘バランスはかなり厳しいです。下手すると最終決戦で一時手を組むことになるブラック・スパイラル・ダンサーのNPCの方がよほど強い、という状況もおおいにあり得ます。しかも、ボス的がNexus Crawlerだってさ(嘆息)。プレイヤー全滅という事態もおおいに考えられます。STは心の準備をしておきましょう。
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