狐(ワーフォックス) | ||
by ヒデノブ・イズミ&ケネス・メイヤー
九尾の白狐についての最古の記録は5000年前の中国にまでさかのぼります。出身は不明です。九尾の白狐は秦と周王朝が滅びる直接の原因となった妖怪で、モンゴル帝国の崩壊にも間接的に関わっていたのではないかという噂があります。人間に化けるときは必ず女性の姿、それもこの世ならぬ美しさをもつ側室の姿で宮廷にもぐりこみ、多くの皇帝の魂を虜にして発狂するか原因不明の死をとげるまで追い込みました。しかし直接的な危険にさらされると、九本の尾を持った巨大な狐に変身し、数々の強力な妖術を操って、災厄と破壊を引き起こしました。体格の割に、この妖怪は爪や牙よりも妖術や妖力を好んだようです。
4〜8世紀の間に、この妖狐は日本の朝廷にもぐりこみましたが、国を滅ぼすいつもの手口はここでは失敗に終わりました。朝廷や貴族が登用していた陰陽師や僧たちが御所に妖怪が潜り込んでいるのに気づき、天皇は九尾の白狐が化けていた女性を殺すよう命じました。京都の名だたる高僧や陰陽師の力をもってしても九尾の白狐を取り押さえるのは決してたやすくありませんでした。しかし、もはや企みを続けることは不可能と悟って、九尾の白狐は都から逃げ出しました。
九尾の白狐のその後の運命については無数の説が存在しますが、いずれも確証をあげることはできません。たぶん九尾の白狐はとうの昔に死んでしまったのだろうと思っている人々がほとんどです。日本各地にこの大妖怪の死体の断片が落ちたと言われる観光名所が存在します。それはしばしば、有毒の火山性ガスを噴出する巨大な悪臭を放つ岩の形をとり、通常の手段では近づくことさえ危険か不可能です。
九尾の白狐の渡来後、変身する能力をもつ狐の伝説が発生しはじめました。この狐たちは手練手管で人間を「化かす」ことで有名でした。
旅人が独り山道を歩いていました。だんだん暗くなってきたので、日が暮れる前に宿を見つけなければ夜は物騒だ、と思いながら峠を越えたとき、行く手にあかあかと灯のともった宿屋が見えました。
「はて、この前通った時には宿屋などなかったはずだが」
しかし旅人はひどく疲れていたので、それ以上深く考えずに宿屋に入りました。おかみも女中もみな美人ぞろいで、夕食の膳はすばらしく美味だったので、すぐに警戒心など忘れてしまいました。旅人は風呂に浸かりながらうとうと居眠りしました。翌朝目が覚めてみると、旅人は肥溜めの壺に浸かっていました。糧食の油揚げ(狐の伝統的な好物です)は盗まれていました。糞の匂いのぷんぷんする「風呂」からようようのことで這い上がってみると、狐の金色の尻尾が藪の中にさっと消えるのが見えましたとさ。
この「化狐」たちは九尾の白狐の末裔です。彼らは人間から狐に、狐から人間に変身する能力を持っており、偉大なる先祖からその美しさだけでなく妖術の才能も受け継いでいます。この東洋の変身能力者はおおむね他の変身能力者たちが苦しめられ、その結果ガルゥと距離を置くようになった〈業怒の戦争〉の戦禍を免れています。日本には世界の他の地方ほど多くのガルゥがいたためしがないのです。狐はガルゥが差し迫っていると恐れるアポカリプスについては狐は懐疑的です。彼らはガイアに忠誠を誓っているわけではありません。しかし、彼らは均衡を司るワームの古い道、ワームが〈法則の網〉の中で発狂する前に確立された道に従っています。ウィーバーの広がりは決して均一ではないのです。
普通の狐と同じように、化狐たちは基本的に一匹で暮らす生き物です。ガルゥの部族にあたる組織は存在しません。しかし、化狐は統一された広大なネットワークを持っています。「長老」たちは組織の長を務めると同時に、すべての若いメンバーの相談役もつとめます。誰であれこの事実を外部に漏らそうとした者は「処分」されることになります。これは普通記憶操作の儀式を受けることを意味しますが、即座に暗殺される場合もありえます。長老たちは智恵深く、尊敬されていますが、自ら命令を下すことはありませんし、統治や裁判を行なう何の政治的権限も持っていません。長老は若い化狐に新しい呪法(ギフト)を教えてくれますが、それは長老がその化狐がその呪法のパワーを制御することができ、賢く利用するだろうと思った時だけです。この判断には何らかの種類の試験を行なうこともあります。
化狐の血統には3種類あります。いわゆるホミッドにあたる「狐人」(化狐と人間の子供)、ガルゥでいうルーパスにあたる「老狐」(化狐と普通の狐の子供)、メティスにあたる「神獣」(化狐同士の子供)です。しかしワーウルフと違って、化狐同士がつがいとなった場合、その子供は狐人、老狐、神獣(真獣とも)、いずれの可能性もあります。他の変身能力者と違って、真の化狐として生まれる子供は10人に1人しかいません。神獣は非常にまれな存在です。二人の化狐の間に神獣が生まれる確率は約1%しかありません。神獣は奇形や不妊で悩まされることはありません。のけ者にされるどころか、「純血種」として敬われることもしばしばです。神獣はどの形態もごく自然に保っていられるので、通常形態をもちません。神獣とメティスの真の類似点は唯一その概念だけです。
化狐は常に一人だけで生まれてきます。産みの苦しみは超自然的な絆によって両親が共に分かち合いますが、化狐でない親は化狐を産んでしまったという強烈なトラウマに生きてゆくことすら耐えられません。従って、性別に関係なく非化狐の親は必ずといっていいほど化狐の子供が産まれる時に死んでしまいます。化狐の親も産みの苦しみを共有しますが、子供が産まれる時に死ぬ確率は遥かに低いものです。
化狐は自分の力に初めて気づいてから(狐人なら約14〜18歳、老狐や神獣なら1〜2歳ごろ)まもなく、一つの予兆を受け取ります。何らかの超自然的存在(同じ化狐である必要はなく、通常は地元の精霊)が化狐に接触してくるのです。化狐は自分の真の正体を知らされ、「開眼」と呼ばれる儀式を受けます。この儀式を終えると、新入りの化狐は超自然の世界が存在し、自分はそこに属していることに気づくのです。この時点で歩む「道」を選択します。これは俗世間と超自然の世界双方における自らの役割を定めるもので、生まれ月によく似ています。ギルドに似た組織が長老たちによって運営されており、若手の化狐たちの援助と教育を行なっていますが、メンバーの行動を制約することはありません。
化狐は周囲の様々な精霊たちと友情を培いはじめ、すぐに超自然のネットワークを築きます。たいていの精霊は場所に宿っているので、化狐はそのような友好精霊を場所から引き離して連れ歩くことをいやがります。これは化狐がガルゥのように世界に広がってゆかなかった一因となっています。
血統:狐人(ホミッド:霊力の初期値3)、老狐(キツネ:霊力の初期値5)、神獣(メティス:霊力の初期値4)
意志力の初期値:6
背景:6点割り振り、ただし〈トーテム〉及び〈純血〉を取得することはできない(化狐はみな純血種と見なされているため。しかし、それによって他の変身能力者たちから恩恵を受けることはない)
化狐は肉体にあまり重きをおかない種族なので、社会的または精神的能力値を最優先分野に選ぶのが普通です。
化狐のほとんどは魅力3以上で、みなホミッド形態における誘惑術の達人です。ほとんどの化狐は狐人なので通常は人間の姿をとっています。化狐が儀式を行なえるのはこの形態の時だけです。
この形態の化狐はどことなく滑稽で、コミカルにさえ見えます。体重は変化しませんが、耳はとがって上を向き、眼は細く吊り上がり、鼻は顔の中央から突き出して、頬ひげが生えてきます。臀部からは実物大のキツネの尻尾が生えてきて垂れ下がります。この形態は普通、老狐のカブがまだ人間に変身する方法を学んでいる途中であるか、化狐が他の同族とふざけようとしていることを意味します。老狐育ちの化狐にとって、尻尾をしまうのは変身の最も難しい部分であり、経験を積んだものでさえ時たま尻尾を隠すのを忘れることがあります。
古い文献の中には、九尾の白狐が頭は狐で着物をまとった姿で描かれているものがあります。人間に恐怖を与えること以外に、この形態を取ることによる実質的な利点はありません。化狐はプライベートの生活でこの形態をとることがあります。クリノス形態ではふさふさと滑らかで美しい毛皮に全身が覆われるため冬でも温かく、しかも人間のように両手を自由に使えるからです。体格はわずかに大きくなり、着ている服が少々窮屈になる程度にはなります。化狐はこの形態でも普通に会話することができます。
化狐はこの形態をとっている時が肉体的に最強の状態です。ヒスポ形態のガルゥほど強くはありませんが、化狐にはこの形態でのみ使える強力な呪法がいくつか存在します。ヒスポ形態の呪法に長けた化狐はトレメア・ヴァンパイアや一部のメイジと互角にわたりあえます。体重は約3〜4倍になり、体長は約2.4〜3.6m、その1/3〜1/2の長さの大きな尻尾が一本、生えています。ほとんどの化狐には夏毛と冬毛の2種類があり、背中に1、2本の筋が入っていることが多いようです。化狐はこの形態で戦う時も、普通は獣のように噛みついたりひっかいたりするのを好まず、人間の武器(普通は刃物)を口にくわえて使う方を好みます。人間と同様に思考することができますが、より暴力的な傾向を帯びるかもしれません。ヒスポ形態では喋ることができませんが、たいていの化狐は呪法の〈心話〉を修得してテレパシーで会話を行ないます。
小柄だからといって化狐を決して軽んじてはいけません。この形態に変身すると、化狐は平均よりやや大型の狐に変身します。高ランクの者は複数本の尻尾を持っていて、自分が知っているどんな複雑な呪法でも最大の効果を上げるようにかけることができます。陰陽師が大勢束になっても、たった一匹の九尾の白狐にはかないませんでした。九本の尾をもつレベルに達することができたのは唯一、九尾の白狐だけです。ですから彼女が操ったような呪法を理解できる者は誰もいません。
業怒の初期値:3
最終的に九尾の白狐を打ち負かした陰陽師たちは、他の精霊たちから追放された破壊の魔物たちを使役しました。悪は悪に対抗するのに利用できるという教訓を九尾の白狐の末裔たちはよく心得ています。
道士は邪悪と破壊の知識に関する専門家です。ガルゥが「ワーム」と呼ぶ存在を知っています。道士たちは何世代にもわたってワームの下僕たちを使役してきました。それらに「闇」という名をつけて。
道士はよく荒れ寺など人里離れた場所で一人暮らしをしています。そこで暗い儀式を行なって、闇のさらに暗い影響を食い止めようとします。
常に破壊がもたらす憎悪を自制心で押さえつけようとしているため、何となく近寄りがたい冷徹な態度の極端な皮肉屋になってしまいがちです。多くの人々が道士は邪悪な者だと誤解しています。道士はしばしば憎悪に駆り立てられることはあっても、憎悪に囚われてはいません。
業怒の初期値:4
衛士は世界の管理人として働くことを選んだ者たちです。庭師のはさみのように、衛士の刀は世界を刈り込み、命の木に害となる枝を切り落とします。衛士は生命を非常に尊重しており、それを奪うことにはためらいを感じます。勇敢な戦士の顔の影には選んだ人生の目的に対する悲しみが隠れているのです。
衛士はその力を、過度に殺しすぎて人間と自然の調和を壊す者どもを狩ることに用います。狂った精霊や、最近では西洋の魔女ハンターも彼らの主要な獲物になっています。人間社会ではしばしば表向き宗教関係者を装って、自然の調和を脅かす者を退治するために働いています。
業怒の初期値:2
傀儡師は精神と幻影の専門家です。彼らは自分たちの幻影が本質的に問題を解決するものではないということを重々心得ています。幻影で人の思考や五感を操ることはできても、現実を変えることはできないからです。傀儡師は自分のことを、苦しんでいる人に慰めをもたらす者と考えています。彼らは心と精神の傷を癒します。すべての希望を失った人に、尊厳ある死をもたらすことができます。しかし戦闘でも決して役立たずではありません。不必要に他人を傷つける者に死をもたらすことに関しては、衛士よりも苛烈といえるかもしれません。精神の中で死ぬことは極端に苦痛に満ちている場合があります。
業怒の初期値:2
語り部は常に興味深い物語を捜しています。愛や憎悪、苦しみや喜びの物語を見つけ出しては書きとめます。年老いた精霊の昔語りに耳を傾けることもあります。そういった者は非常に賢いからです。語り部が長い生涯を終えるまでには、世界中から収集した伝説の山ができています。もし情報が、とりわけ古代の伝承などの知識が必要ならば、語り部に聞けば知っているでしょう。あるいは、どこにゆけば知識が手に入るか知っていることでしょう。
化狐は人間よりは強靱な生命力を持っているとはいえ、ガルゥのように高速な再生能力はありません。したがって、すべての負傷は再生不能ダメージとして扱います。魔法的手段を使わないなら、負傷を回復するには休息しかありません。安静にして(傷口が開くような激しい運動を避けて)1日過ごすごとに、1耐久度レベルの負傷が回復します。化狐は銀を弱点としません。
ランクは挑戦や名声ではなく、経験値を通して獲得されます。すべてのキャラクターはランク0から出発し、ヴァルパス形態で尻尾は一本しかありません。ランクを1段階上昇させるには、経験値を(現在のランク×7)点消費します。名声は記録しません。ランクが上昇すると、新しいランクの値と同じレベルまでの呪法が使えるようになります(ただし、ランク0のキャラクターはランク1の呪法を使えます)。ランク1以降は、1ランク上昇するごとにヴァルパス形態での尻尾の数が1本増えます。つまり化狐はランクの値に等しい本数の尻尾を持っているわけです(ランク0は言うまでもなく例外です)。呪法使いとしての能力の差は化狐にとって地位の上下に近いものです。
化狐は他の生物とは異なる齢のとり方をします。化狐は全て100歳分の寿命をもっています。しかし、2本以上の尾をもつ化狐の場合、尾の本数分の年が過ぎるごとに1歳しか齢をとりません(つまり六尾の狐なら6年に1歳の割合で老いてゆきます)。さらに、化狐は歳をとっても老衰することがありません。むしろ齡を重ねるほどますます強力で美しくなってゆきます。そして寿命が来ると、穏やかに独りで死んでゆきます。噂では九尾の白狐はまったく歳をとらなかったということです。
長老とみなされるためには、最低5本以上の尾を持っていなければなりません。「長老」と呼ばれるとはいえ、年齢は重要ではありません。しかし5本尻尾があるからといって必ずしも長老になれるわけではありません。どれほど経験を積んでも、そもそも長老になるだけの器がない化狐もたくさんいます。そういうわけで化狐の長老はごく珍しい存在です。
化狐は概して好奇心旺盛ですが、用心深いたちでもあります。そうする余裕がある限りはたいへん遊び好きな生き物です。野蛮な暴力を嫌い、噛みつきや待ち伏せといった原始的な戦術はめったに使いません(「文明的な」暴力は別ですが)。ほとんどの化狐は業怒を制御する術を知っています。普通は禅のような修行をするか、特別な呪言を唱えます。化狐はまた特殊な剣術を修得することがあります。訓練を積んだ化狐は、ヒスポやヴァルパス形態の時、刃物を口にくわえて振るうことができます。これは〈武器〉技能の専門化で表現することも可能です。
呪法とはいわゆる魔法のことで、化狐にとって(ガルゥの)ギフトに相当します。一部の呪法は自然の力そのものを引き出すもので、霊力ポイントの消費か霊力ロールが必要です。破壊と混沌からパワーを引き出す呪法には、業怒が必要になります。
化狐の呪法にはガルゥのギフトに類似したものが多数あります。ストーリーテラーの裁量で、化狐のキャラクターがいくらかの制限つきで「ワーウルフ」のルールブックに収録されたギフトを修得できることにしてもかまいません。ホミッドのギフトは狐人が修得でき、ルーパスのギフトは老狐が修得できます。各「道」では対応する生まれ月のギフトを修得可能です。道士はシーアージ、衛士はアーローン、傀儡師はラガバッシュ、語り部はガリアルドのギフトを使うことができます。神獣はフィロドクスのギフトを修得できます。
程度はどうあれ、人間1人が術者を恋するように仕向けます。実はこの呪法を無意識に使う化狐も多いのです。ストーリーテラーはこの呪法を勝手にロールすることで興味深い状況を創り出したいと思うかもしれません。カリスマ+〈かけひき〉(難易度6)で、目標の意志力と対抗ロールを行ないます。成功数が多いほど目標はより深く術者に惚れ込んでしまいます。
他者と交渉するときに、より説得力のある交渉ができます。術者の言葉や意見には重みや誠実さが加わって聞こえます。カリスマ+〈かけひき〉で判定します(難易度6)。成功すれば、そのシーンの終わりまで、あらゆる社会的能力値によるロールの難易度が成功数ぶん低下します。
野生動物は人間がしばしば死の運び手となることをよく知っています。この呪法を修得した化狐は体から人間の匂いを強烈に発散し、周囲の動物を不安で神経質にさせます。術者から半径6m以内にいる普通の動物はすべて、ダイス・プールに−1のペナルティーを受けます。また、この呪法の効果を受けた動物は術者から逃げようとするでしょう。術者はこの呪法が不必要な時は効果を抑えておくことができます。
この呪法は夜しか使えません。月光に照らされない限り、術者の姿は全く見えなくなります。月光を浴びると姿が見えてしまいますが、月光の届かない場所にゆけば再び見えなくなります。この呪法を使うには霊力ポイント1点を消費します。効果は一晩のあいだ持続します。
術者が明らかな嘘をついても、目標は術者が本当のことを言っていると思い込みます。霊力ポイントを1点消費し、機転力+〈雄弁〉で判定します。難易度は目標の機転力+〈警戒〉です。効果は(成功数×1)ターンの間続きます。
業怒ポイントを1点消費し、人心掌握+〈オカルト〉(難易度8)の判定に成功すれば、目標1人を不運な「事故」に遭わせ、何らかの形で怪我を負わせることができます。
成功数 | 事故の程度 |
---|---|
1 | 軽傷:こむらがえりなど。目標は普通に動けるものの苦痛をおぼえる。 |
2 | 重傷:足首の捻挫や骨折など。耐久度レベル表で「負傷」状態に陥る。 |
3 | 不具:外科手術が必要な重傷を負い、1ヶ月ほど入院する。目標は「行動制限」状態に陥る。 |
4 | 目標は再生不能ダメージを受け、「負傷」状態に陥る。目標が人間の場合、ストーリーテラーの裁量で死んだことにしてもよい(トラックにはねられる、感電死するなど) |
5 | 目標は再生不能ダメージを受け、「行動制限」状態に陥る(ガス管爆発に巻き込まれる、全身火だるまになるなど)。 |
術者はワーウルフと同様に「ステッピング・サイドウェイ」が行なえるようになります。この呪法を修得しない限り、化狐はアンブラに入ることができません。しかし、いったん〈霊界渡り〉を修得すれば、術者はガルゥと同様に、いつでも望む時にステッピング・サイドウェイを行なうことができます。
目標1人から、1つの知識(ある特定の住所、事実など)あるいは特定の事件1つ(化狐に遭った事など)の記憶を消去します。化狐はデリリウムを引き起こさないので、化狐が存在するという話が広まるのを防ぐにはこの呪法で記憶を操作しなければなりません。意志力ポイント1点と霊力ポイント1点を消費し、交渉力+〈かけひき〉ロールを行ないます(難易度6)。目標は意志力ロールで抵抗を試みることができます(難易度は術者の尻尾の数+3)。
(メティスのレベル1のギフトに同じ)
術者は地面にトンネルを掘ることができます。トンネルは比較的堅固なので、他の者が術者の後について通り抜けることもできますが、狭いので一度に通れるのは1人だけです。ただし、術者より大きなサイズのものは通れません。術者はクリノス、ヒスポ、ヴァルパスのいずれかの形態でなければならず、トンネルは術者が取っている形態と同じ広さにしかなりません(ヴァルパス形態の術者が掘ったトンネルを通り抜けられるのはヴァルパス以下のサイズの物だけです)。トンネルは音を反響するようにはできておらず、持続時間が過ぎると崩れてしまいます。
システム:術者の筋力+〈運動〉で判定します。難易度は穴を掘ろうとする地面の材質によります。柔らかい土なら4、堅い岩なら9程度でしょう。1ターンに1ヤード(約1m)のスピードで、成功数ターンのあいだ掘り進むことができます。
『ワーウルフ・プレイヤーズガイド』のラットキンのギフトと同じ。
術者は一時的に五感を非常に鋭く研ぎ澄ますことができます。人形や三分変化形態でも、動物並みに感覚が鋭くなります。狐頭、獣狐、九尾形態では、ほとんど超自然的な域まで達します。術者は霊力ポイントを1点消費します。この呪法の効果は1シーンのあいだ続きます。人形または三分変化形態の時は、知覚力ロールの難易度は−2されます。また、通常人間には知覚不可能なものでも、知覚力+〈野性本能〉でロールを試みることができます(難易度6)。狐頭、獣狐、九尾形態では、知覚力ロールの難易度に−3のボーナスがあります。さらに、〈野性本能〉を用いるロールのダイス・プールに+1されます。
この呪法を使うと、術者は驚異的な距離を跳躍することができます。術者は強靱力+〈運動〉でロールします(難易度7)。成功すれば、術者は通常の2倍の距離を跳躍することができます。ルールブックのジャンプ表を参照。
(狐人の呪法と同じ)
この呪法は夜しか使えません。月光に照らされない限り、術者の姿は全く見えなくなります。月光を浴びると姿が見えてしまいますが、月光の届かない場所にゆけば再び見えなくなります。この呪法を使うには霊力ポイント1点を消費します。効果は一晩のあいだ持続します。
霊力ポイントを1点消費し、交渉力+〈医学〉ロール(難易度7)に成功すれば、目標1体を丸1日のあいだ盲目にすることができます。この盲目には目玉を突き刺されるような激痛が伴います。痛みに耐えるためには目標は強靱力ロール(難易度7)に成功しなければなりません。
(狐人の呪法と同じ)
術者はワーウルフと同様に「ステッピング・サイドウェイ」が行なえるようになります。この呪法を修得しない限り、化狐はアンブラに入ることができません。しかし、いったん〈霊界渡り〉を修得すれば、術者はガルゥと同様に、いつでも望む時にステッピング・サイドウェイを行なうことができます。
日本には超自然の生物たちの広大なネットワークが存在します。精霊や化狐などが窮地に陥った場合、ネットワークの仲間たちに救援を求めることができます。この呪法は化狐の救援要請です。よほど深刻な状況でなければ使えませんが、ロールの必要はなく、自動的に成功します。たいていの精霊は場所に宿っているので救援に駆けつけることはできません。しかし〈盟友の呼び声〉を聞きつければその場でできるだけのことをしてくれます。もしたいした事態でもないのにむやみにこの呪法を使ったら、精霊たちは腹を立て、次に〈盟友の呼び声〉を使っても答えてくれないかもしれません。この呪法を使える化狐を敵に回した人物は、どこへ逃げても超自然の存在から襲われることになるでしょう。これはストーリーの興味深い幕開けになるかもしれません。
術者はその場所に残された残留思念――強い感情や暴力を伴う出来事によって残る感情の痕跡――を「読み取る」ことができます。サイコメトリーのようなものです。例えば、昔の絞首台からは恐怖と絶望の感情が読み取れることでしょう。この呪法を使うには、知覚力+〈共感〉で難易度7のロールが必要です。
(ガルゥのギフトと同じ)
目標1つの真の正体を見破ります。この情報は匂いとしてもたらされます――それはまさしく目標の本性の匂いです。このギフトを習得すると自動的に相手が化狐かどうかが判ります。ヴァンパイアやフェアリーを見破るには、知覚力+〈野性本能〉で難易度8の判定に成功しなければなりません。このギフトは魔術師さえ見分けることができますが、難易度は9になります。
意志の力で負傷の苦痛に耐え、通常と同じように行動することができます。意志力ポイントを1点支払うことによって、そのシーンが終わるまですべての負傷によるペナルティーを無視できます。
(狐人の呪法と同じ)
この呪法は夜しか使えません。月光に照らされない限り、術者の姿は全く見えなくなります。月光を浴びると姿が見えてしまいますが、月光の届かない場所にゆけば再び見えなくなります。この呪法を使うには霊力ポイント1点を消費します。効果は一晩のあいだ持続します。
ホミッドのギフト〈にらみ〉とほぼ同様ですが、日本土着の全ての生物(超自然の生物を含む)に効果があり、目標は恐怖に逃げ出すよりも従順さを示すようになるでしょう。術者はカリスマ+〈威圧〉で判定します(難易度6)。効果は成功数に等しいターンの間持続します。成功数が5以上なら、そのシーンが終わるまで効果が続きます。目標は効果時間のあいだ術者を攻撃できません。攻撃されたら身を守ることはできます。
〈残留思念〉に似ていますが、術者はその場所を通り過ぎた思考を聞くことができます。非常に強烈な思念や、その場所に影響を与えた思考だけを聞くことができます。例えば、昔の強制収容所跡では捕虜たちの苦悶の呻きが聞こえてくることでしょう。この呪法を使うには知覚力+〈魔術知識〉で難易度8のロールに成功しなければなりません。
(狐人の呪法と同じ)
術者はワーウルフと同様に「ステッピング・サイドウェイ」が行なえるようになります。この呪法を修得しない限り、化狐はアンブラに入ることができません。しかし、いったん〈霊界渡り〉を修得すれば、術者はガルゥと同様に、いつでも望む時にステッピング・サイドウェイを行なうことができます。
目標1人に術者の動作とそっくり同じ動きをさせることができます。意志力ポイント1点を消費し、交渉力+〈かけひき〉(難易度7)と目標の意志力ロールで対抗判定を行ないます。術者は(成功数×1)ターンの間、目標に望み通りの動作をさせることができます。
刃の付いた武器1本(だんびら、短刀、刀など)に呪力を込め、命中した相手に再生不能ダメージを与えるようにします。術者は霊力ポイント1点を消費し、機転力+〈儀式/伝承〉で難易度7のロールに成功しなければなりません。
術者は付近にあるワームの力を感知できます。この呪法は一種の霊感のようなもので、視覚や嗅覚のイメージは現れませんが、この呪法を使う化狐はよく「ここはワームの悪臭がぷんぷんする」などと表現します。この力を使うためには術者は知覚力+〈魔術知識〉ロールに成功しなければなりません。で難易度は精神集中の度合いとワームの影響力の強さによって決まります。室内にいるフォモーレ1体を感知するなら、難易度は6です。ヴァンパイアは、人間性が6以下の者に限って、この呪法で感知することができます。
(ガルゥのシーアージのギフトと同じ)
この呪法を修得した化狐は精霊と意思疎通することができます。相手の精霊が望む望まないにかかわらず会話をすることができます。もちろん、(普通は)相手が去ろうとするのを引き止めることはできません。いったん習得すれば自動的に精霊の言葉が解るようになります。ただし、一部の精霊の言葉は理解できないことがあります。
術者の尻尾の毛から小さな生物の群れ(種類は術者の任意)を呼び出します。意志力ポイントを1点消費し、強靱力+〈魔術知識〉で難易度8のロールに成功することが必要です。(成功数×25)匹の生物が召喚されます。この生物たちは術者が思考の中で下した命令に従い、物を持ち上げる(生物10匹で筋力1に相当します)などの単純な作業をさせることができます。術者から6m以上離れることはできません。いやがらせをして敵の注意をそらすことは可能ですが、何のダメージも与えることはできません(25匹をまとわりつかせるごとにダイス・プールに−1のペナルティを与えられる)。生物たちはそのシーンが終わると消えてしまいます。
霊力ポイントを1点消費し、知覚力+〈警戒〉ロールに成功すると、術者は月光の下にいるあらゆる隠れた生物を発見することができます。〈透明化〉や〈知らぬが仏〉などのギフトを使用しているガルゥをはじめ、ペナンブラに隠れている精霊やディサプランを使って透明になっているヴァンパイアも見破ることが可能です。
日本の陰陽師はしばしば小さな紙の札に呪文を書き付けることで魔力を込めます。このような札は特定の場所か目標に張り付けておき、呪言を唱えると込められた呪法が発動するようになっています(札を燃やすことで発動する場合もあります)。札が破れると呪法の効果も消えてしまいます。
(レベル2)
この呪符を閉じた部屋の中に貼っておくと、その部屋は脱出不能の牢獄と化します。ドアを開けると全く同じ部屋に出るのです。廊下に貼ったなら、その廊下は歩いても歩いても決して端にはたどりつけません。この呪符を作成するには霊力ポイント1点を消費し、知力+〈魔術知識〉で難易度6のロールに成功しなければなりません。呪符が効果を発揮するかどうかは実際に発動するまで判らないので、ロールはストーリーテラーが術者のプレイヤーに隠して振り、結果は伏せておきます。前もって作成しておいた呪符を発動させるには霊力ポイント1点を消費します。
(レベル3)
この呪符は精霊1体をもと来たレルムに送り返す効果があります(特定の故郷のレルムを持たない精霊であればニア・アンブラに送還されます)。この呪符は一度発動させると燃え尽きてしまいます。
知覚力+〈警戒〉で難易度6のロールに成功すると、半径30m以内に敵意を持った生物がいれば感知できます。
衛士は戦いにおいては優れた指揮官として尊敬されています。その理由の一つはこの呪法を使えることです。〈士気高揚〉を身につけた化狐は、戦況に勝機を見出し、仲間の闘志を奮い立たせることができます。霊力ポイントを1点消費すると、術者と共に戦っている仲間は、シーン終了まで、すべての意志力ロールに自動的に成功数1で成功します。術者自身には効果がありません。
相手に触れるだけで転倒させることができます。目標の強靱力+〈運動〉を難易度として、敏捷力+〈医学〉で判定します。1個でも成功すれば目標は地面に転倒します。
業怒ポイントを消費し、敏捷力+〈魔術知識〉で難易度7のロールに成功すると、稲妻、炎、氷、風などのエネルギーの矢を目標1体に叩きつけることができます(どの種類のエネルギーを用いるかはこの呪法を修得する時に決めます。呪法の名称も種類に応じて、稲妻なら「雷撃」、炎なら「炎撃」……となります)。エネルギーの矢は目標の耐久レベルに(成功度×1)レベルの再生不能ダメージを与えます。このダメージに吸収ロールを試みることはできません。この呪法は術者がヒスポ形態の時のみ使用できます。
この呪法を使うと術者はガルゥに匹敵する再生能力を得ます。1ターンにつき1レベルの速度で耐久度が回復してゆきます。この能力はあらゆる点でガルゥの再生能力と全く同様に働きます。この呪法を発動させるには霊力ポイントを1点消費し、効果はシーン終了まで持続します。
霊力ロール(難易度9)に成功し、業怒ポイント1点を消費すると、付近の地火風水から龍1体を創造します。水か炎、または強風が必要です。龍のサイズは成功数によって決まります(体長は成功数×1.5m)。この龍は「噛みつき」と「体当たり」攻撃を行なうことができます。与えるダメージは成功数によって決まり、(成功数×2)個のダイス・プールを用いてダメージ決定ロールを行ないます。龍は術者の意思にすすんで従いますが、術者が精神集中を続けていなければ形を失ってしまいます。術者の集中が乱された場合、龍は消滅してしまいます(ストーリーテラーの判断による)。
混乱、恐怖、激怒など、精神状態が乱れている生物1体を鎮めます。この呪法が効果を発揮するには、霊力ポイント1点を消費し、交渉力+〈共感〉ロール(難易度は目標の意志力レベル)に成功することが必要です。たとえ目標に抵抗する意志がなくても、このような極端な感情は制御しがたいものなのでロールは必要です。さらに、自分自身にこの呪法をかけるのでない限り、術者は必ず目標と視線を合わせなければなりません。この呪法は狂気を治療するものではありません。
『ワーウルフ』ルールブックの〈聖母の手〉と同じ効果があります。
術者は相手の傷を、再生不能ダメージでもなんでも、傷口に手をかざすだけで癒すことができます。術者自身の傷を癒すことはできません。術者は霊力ポイントを1点消費し、知力+〈医学〉でロールします。難易度は目標の業怒レーティングです。化狐以外の者を癒す場合、難易度は6です。(成功数×1)レベル分の負傷が治ります。戦闘で負った傷もこの呪法で癒すことができますが、その傷を負った同じシーンに、霊力ポイントを消費して呪法を使わなければなりません。同じ相手に何回使ってもかまいませんが、その都度霊力ポイントは消費します。
(ガルゥの〈かすみ目のぼやけ〉と同じ)
術者の姿はちらちらするかすみのようになり、人に気づかれることなくその前を通り過ぎることができます。ただし、一度本来の姿を見破られると効果はなくなってしまいます。もう一度呪法を発動し直せば見破った者の眼をくらませることはできます。術者は交渉力+〈隠密〉でロールします(難易度8)。術者を発見しようと試みる知覚力ロールの難易度は、成功数の分だけ上昇します。
目標1体が術者に嘘を言っている、あるいは術者をだまそうとしているかどうかを見破ります。目標の意志力を難易度として、術者は知覚力+〈共感〉でロールを行ない、さらに霊力ポイントを1点消費しなければなりません。この呪法では目標が嘘をついていることは判りますが、本当はどうなのかということまでは分かりません。
術者の視界内にいる目標1体に、術者が頭の中で思い浮かべた映像を見せ、それが実在の物体だと思い込ませてしまいます。霊力ポイント1点を消費し、目標の意志力レベルを難易度として交渉力+〈共感〉ロールに成功すれば効果が表れます。この幻影は非常に明瞭なもので、目標がそれを幻だと見破らない限り、消し去ることはできません(見破るためにどんなロールが必要かはストーリーテラーの判断による。難易度は幻影のもっともらしさで決まる)。この幻影は術者が精神集中を行なっている限り持続します。
術者は適切な説話を一つ語り聞かせ、意志力ポイント2点を消費します。自分の意思でその話を聞いた者はすべて、一つの暗示を植え付けられます(ヴァンパイアの妖力〈傀儡〉によく似ています)。暗示は術者のかけひき+〈芸能〉に等しい日数の間持続します。
(ガルゥのギフトと同じ)
公園のハトから川のビーバー、海の魚にいたるまで、あらゆる動物と会話することができます。会話できるからといって相手の態度が友好的になるわけではありません。飢えた虎は自分の言葉が解るからといって目の前の獲物を見逃しはしないでしょう。術者はカリスマ+〈動物使役〉で難易度6の判定に成功すれば、1種類の動物の言葉を話せます。複数の種類の動物と同時に出会った場合、それぞれの種類ごとに判定が必要です。同じ種類の動物でも、出会うたびごとに判定しなければなりません。
(ガルゥのギフトと同じ)
一時的に白昼夢の領域を創り出して、その中で任意の相手(複数可)と会話することができます。この会話は音声ではなく思考をかわすので、領域外にいる者には聞こえません。術者は目標1人ごとに意志力ポイントを1点消費します。目標が抵抗する場合、術者は毎ターン目標の意志力を難易度として、交渉力+〈雄弁〉ロールに成功し続けなければなりません。夢の領域にいる者同士は、互いに会話をかわすことはできますが、相手に危害を加えることはできません。目標の肉体は普通に行動できますが、あらゆるロールのダイス・プールに−2のペナルティーを受けます。〈心話〉の効果は参加者全員が終了を希望した場合と、抵抗する目標に対するロールに術者が失敗したターンに消滅します。目標は全員術者の視界内にいる必要があります。
多くの語り部は古い伝説や昔話を収集しています。実際、そういった伝説はあまりにも多過ぎて一人の頭では細部まで覚えきれないくらい存在します。そこで、たいていの化狐はこの呪法を修得します。この呪法を使うと、術者は生死を問わず、他の語り部の記憶を探ることができます。術者は(普通は日本の)ある特定の遺物や遺跡にまつわる伝説を、かなり細部まで「思い出す」ことができます。この呪法を使うには問題の目標(あるいはその絵)を見つめながら、知力+〈儀式/伝承〉ロールに成功しなければなりません。難易度はストーリーテラーが決定します。
土着の精霊1体に問いかけて、特定の個人の居場所を教えてもらうことができます。その人物が質問を受けた精霊のテリトリー内にいなければ、そう教えてくれます。この呪法を使うには、霊力ポイントを1点消費し、機転力+〈魔術知識〉で難易度6のロールに成功しなければなりません。
『ワーウルフ』ルールブックからは以下の儀式が化狐に知られています。
清めの儀式(浸透の儀式の一種)、去りし者のための集い、タリスマン同調の儀式、封印の儀式(封印される精霊の同意を得た時のみ)、召喚の儀式、村八分の儀式、穴熊の穴、隠れ谷の儀式
自動車と電気製品が日本のトレードマークになる以前、この島国は超自然の存在に満ちていました。きちんと祀られなかった精霊は恐ろしい姿で祟りをもたらしましたが、広く民間信仰の対象となった精霊もいます。精霊と土地にまつわる伝説が後から後から発生し、今日でも保存され語り伝えられています。一部の超自然の生き物が時折人里に下りてきて、実際に災厄をもたらしたことはありましたが、人間と自然はおおむね調和のうちに生きてきました。人間は自然を敬い、自然は人間を守り、恵みを与えてきたのです。
西洋では、人間と自然は敵同士でした。この運命が堕落したワームを創造するのを助長したのです。九尾の白狐の性格はガルゥよりむしろキンドレッドに近いといえるかもしれません。彼女は巨大になりすぎた古代中国王朝とそれが自ら招いた滅亡の影です。この大妖怪の死体のかけらは今でも有毒のガスを噴き出しており、周囲には草すら生えません。
化狐の力の源は闇と死ですが、それらも自然の一部です。結局、日本はこのような共存関係を工業化時代が到来し西洋の科学技術が紹介されるまで示し続けてきました。かつての妖怪の子孫たちはガルゥがウィーバーとワイルドと呼ぶものの「中庸」の道を歩くことを覚えました。彼らはワームの本来の機能、限界を超えて増えすぎたウィーバーやワイルドの創造物の破壊を象徴しています。もちろん、化狐は自分たちの果たしている役割を意識しているわけではありませんが、彼らがもたらし続ける破壊は究極的には調和をもたらすものなのです。こういうことは両親に教わるわけでもなければ、長老が教えてくれるわけでもありません。化狐は誰でも子供の頃から果たすべき目的を知っているのです。
ガルゥの「業怒」はガイアを略奪するものに対する憤りから生じていますが、化狐の「業怒」はそれとは違って、大地の保護者としての使命と生まれながらにもつ破壊者としての力の葛藤から生じるものです。この葛藤が生む純粋な、荒々しいエネルギーを化狐は利用し、その力はガルゥが使う業怒にも劣らないものです。
現在、化狐たちはガルゥと西洋からやってきた堕落者ワームとの戦いにまきこまれています。均衡を回復する者として、化狐はいまや遠い先祖が仕えた主人、エントロピーのワームこそが最大の敵であることに気づきました。しかし、化狐たちはガルゥが自己の運命を熱心に追求するあまり破壊しすぎて自然のバランスを破壊することを阻止しなければなりません。化狐の肉体的力はワームの力から引き出されるものですが、やはりガイアの子供であることは同じです。彼らはどんな道を選ぶのでしょう?
|前口上|最新作|観覧席|喫茶室|案内板|楽屋裏| |