訳者まえがき:
おそらく Book of Nod の編纂者である Aristotle deLaurent が、カマリリャ寄りの立場にいたからだろうが、WW社オフィシャルの『Book of Nod (WW2251)』の The Words of the Clan Chief の章には中立系、サバト系氏族の Clan Founder の訓戒は収録されていない。

そこで穴を埋めるように創作されたのが当テキストである(トレメール、ジョヴァンニが抜けているのは、お分かりの方も多いと思うが、Book of Nod のオリジナルが製作された当時には未だ存在していない氏族だからだ)。聖書を意識して同一テキストを故意に口語訳、文語訳で訳し分けてみた。楽しんでいただければ幸いである。

なお、当テキストはファンが創作した非公式なものであり、White Wolf社の著作権を侵害するものではないことを念のため追記しておく。

[Jan. 16, 2000 補足]
太祖ツィミーシィの言葉には、自らが滅びることを予期したような表現が見えるが、シナリオ集『Night of Prophecy』ではまだ健在な様子。このあと同族喰らいでとって代わられるという予言なのかもしれない。(情報提供:大水青(飼い主)さん。ありがとうございました!)


ラソンブラよりその子らへの言葉
心に銘じよ、汝、わが継嗣らよ、
我らがいずこへ赴こうとも、影の触手は後をつけてくることを。
心に銘じよ、汝、わが継嗣らよ、
我らの虚飾はつねに鏡に現れることを。
心に銘じよ、汝、わが継嗣らよ、
我らの地はとこしえに闇の地でもあることを。
心に銘じよ、時至れば、闇は我が魂を喰らい、
いつの日か汝の魂をも喰らうであろうことを。
しかと聞け、わが息子らよ、わが娘たちよ!
我ら自身の闇にむざむざと喰らわれてはならない!
心に銘じて忘れるな、我らの棲処は影の棲処であることを、
彼処(かしこ)に我らは永劫に棲まい、彼処より見張るのだ。
我らが創られたは影の中より見張るため、
我らの使命とあらば、我らはかく在ろう。
永遠に心に銘じよ、我が汝を見張っていることを、
群影の内より、我がものならぬ数多の目を通して。
そしていつの日か我は、肉なる家に至る道を新たに見いだし
いまひとたび汝らに交じって歩むであろうと。
汝銘じよ、我が継嗣、
影蔓(かげつら)我等が背より離れじ、我等何処(いづく)へ向かうとも。
汝銘じよ、我が継嗣、
我等が虚飾は必ずや鏡の内にぞ現れん。
汝銘じよ、我が継嗣、
我等が封土(ほうど)はとこしえに闇の封土となるよしを。
時至らば、闇、我が魂(たま)を喰らい
いずれ汝(な)が魂(たま)喰らわんと知れ。
(しか)と聞け、我が息(そく)、我が娘!
(おの)が身をむざと我等が闇のただ喰らうに任せることならじ!
銘じて忘るることなかれ、我等が臥所(ふしど)は影の臥所、
彼処(かしこ)に我等とこしえに棲まいて物見務(つと)むべし。
そも我々の創らるは影より物見せんがため、
さこそ我等の所以なりせば、さて我等かく在れぞかし。
永遠(とわ)に銘じよ、我こそ汝(な)が物見なる、
影の内より、我がものならぬ眼(まなこ)にて。
また、いつの日か我、新たなる肉の宿りに入(い)る道見出し、
いまひとたび汝等と交わらんと知れ。
ツィミーシィよりその子らへの言葉
怪物として、
永遠にわれらは呪われて在る。
カインに呪われ、〈いと高き御方〉に呪われ、
何をしようとかまうものか、
何を言おうとかまうものか、
われらは永遠に呪われて在るのだから。
怪物として、
永遠になんじらは呪われて在る。
カインに呪われ、〈いと高き御方〉に呪われ、
わたし自身に呪われて。
永遠になんじらは呪われて在る。
怪物として、
われらは未来永劫呪われて在る。
悔悛に時をいたずらに費やすな。
われらは怪物、未来永劫怪物なのだ。
怪物よ!
なんじの怪物性を恥じてはならぬ!
なんじの呪われた身の上を愉しむがよい!
しかし心せよ、わたしが犯した過ちを繰り返さぬよう。
やがて時が来れば、わたしは倒れ、なんじらの一人が
わたしにとって代わるだろう。
呪われてあれ。
呪われてあることにふりまわされてはならぬ。
悪鬼とて
とこしえに我等断罪さる。
カインによりて断罪され、〈いと高き御方〉によりて断罪され、
贖うたとて何になろう、
悔いたとて何になろう、
我等とこしえに断罪さるさだめとあらば。
悪鬼とて
とこしえに汝等断罪さる。
カインによりて断罪され、〈いと高き御方〉によりて断罪され、
なお我みずからにより断罪さる。
汝等とこしえに断罪さるさだめなればぞ。
悪鬼とて
とこしえに我等断罪さる。
いたづらに悔悛に時を過ごすなかれ。
我等は悪鬼なれば、とこしえに我等悪鬼ならむ。
悪鬼らよ!
なんじ悪鬼たるを恥ぢることなかれ!
なんじ断罪さる身をことほぐべし!
なれど心せよ、我が轍を踏まぬよう。
時至らば、我倒れ、汝等の内より
我を継ぐ者出ずるべし。
断罪されて在れ。たとい断罪されたとて
己を御するは汝みずからぞ。
アッサムよりその子らへの言葉
力の内にわたしは棲まう! わがもとへ来たれ!
力からわたしは渇きを癒す! わがもとへ来たれ!
力と共にわたしは生きる! わがもとへ来たれ!
無価値な者の心臓の血を喰らえ、
さすればそなたもわが力に浴することができよう。
生きるに値せぬ者の命を取り、
ひといきにその血の力を飲み干せ。
わたしから一歩引き離されたときにはわが子らを探せ。
ウル-シュールギを見いだし、なんじの血の強さを彼に証せ、
さすれば彼の者、汝を〈一なるもの〉へ導かん。
わがもとへ来たれ!
わたしがかつてそうしたように、心臓の血を飲み干して。
力の内にぞ我棲まう! 我がもとへ来たれ!
力にぞ我が喉潤す! 我がもとへ来たれ!
力と共にぞ我生きん! 我がもとへ来たれ!
徒者(いたづらもの)の心臓に血を喰らえ、
されば汝も我と共に我が力に浴さん。
廃者(すたれもの)より命を奪いて、
血の力を飲み干すべし。
汝が一歩我より引き離されし折は我が子らを探せ。
ウル-シュールジィを見いだし彼の者に汝が血の毅さを証(あか)せよ、
さすれば彼の者、汝を〈一なるもの〉へと導かん。
我がもとへ来たれ!
心臓の血を飲み干し、我がかつて為した如くに。
セトよりその子らへの言葉
蛇。われらは蛇である。
他人を堕落へと導くのだ、
そうしてかの蛇はアダムとイヴを誘惑してエデン追放へ至らしめ、
それがカインの誕生を招き、
それがわたしの誕生を招いた。
堕落を通じてこそ、良きものが来たる、
なんじに良きものが来たる。
他者を堕落させよ、
なんじがそうした良きものを取れるよう。
そして己自身をも堕落させよ。
己自身を堕落させよ、
良きものが他者にも行き渡るよう。
堕落して、そこから来たる良きものに快楽を求めよ。
かくてその良きものを次に伝えよ、
かつてわたしがなんじに伝えたように。
蛇。我等は蛇ぞ。
人を堕としめん、
かくてかの蛇はアダムとイヴを惑わし楽園追放に至らしめ、
かくてカインを生誕せしめ、
かくて我を生誕せしめければ。
魔道を通じてこそ、よきもの来たらん、
汝によきものぞ来たらん。
人を堕としめよ、
かくて汝よきものを取るべし。
汝みずからを堕としめよ、
かくてよきものを人に伝うべし。
魔道に堕ちよ、
彼処より来たるよきものに快楽を求めん。
かくてよきものを人に伝えよ、
かつて我、己がよきものを汝に伝えし如く。

オリジナルテキストThe Book of Nod: More Words of the Clan Chiefs
出典サイトSanguinus Curae
原著者Xavier Lev-Argonne
翻訳Professor